前2回、「伝統工芸を経営視点でみる」を書いた
最後である今回は「売る」というテーマで書く
どんなに良い商品、どんなにこだわった商品でも
それがお客様の手に適正な価格で届かなければ、事業として成立しない
もちろん、持続継続も然りだ
前回書いたテーマ「お客を集める」から、伝統工芸の弱さが見えてきたが、
「売る」ということに対しても、伝統工芸の弱さが見えた
どの工房も展示販売ブースが併設されていた
ただし、内装も新しく綺麗で、常時販売員が居て、「積極的に接客販売する」という雰囲気ではなかった
これはこれで、私は正しいと思う。なるべくしてこうなったというべきか・・
間違っても「これは展示販売ブースを小綺麗にすればお客は集まる。だから設備投資しよう」なんてのは止めてほしい。そんなコンサルは消えてほしい・・笑
理由を何点かあげると
・工房併設で、ある程度の広さが必要な為郊外にあるので、お客様にとって交通の便が悪い
・商品の特性上(オーダーメード、低価格商品ではない、マーケットが小さい)、一見さんは少ない
・上記二つの理由から、人的リソース、内装費用などを掛けてもリターンが得られると思えない
では、何もしないで良いかと言うと、工夫次第で「お客を集める」「売る」に繋げることは可能だ
それには、まず簡単な自社事業の分析だ
クラシックではあるが、色褪せないSWOT分析でみてみる
・S(強み)→伝統により培われた商品、技術とも一級品で、他では真似できない
・W(弱み)→立地が悪い、クレジットカードが使えない
・O(機会)→日本文化を見直す風潮、海外での高い評価
・T(脅威)→顧客の高齢化、マーケットが小さい
上記分析結果から、僕が社長だったら思いつくだけ(もっとやれることはたくさんある。笑)でも下記の対策や企画を実施する
①まずはクレジットカードが使えるようにする(最近はスマホに挿して使うカードリーダー「square」などもある)
・工房を見学した観光客で「購入したい」とおっしゃる方が少なくないそうだが、旅行者は大金を現金で持ち歩かない。外国人は特に
②ICT戦略に力を入れる(ホームページは各工房もっているが、正直イケてない)
・インターネットに地理的要因は関係ない。商品の特質上Eコマースは無理でも、「お客を集める」には寄与するはずだ。ホームページ、ブログ、SNSで、消費者との距離を縮めよう
③工房で一定額以上商品を購入してくれたお客様には、工房までの旅費相当額をこちらでキャッシュバックする
・高級商品ゆえにマーケットが小さいが、唯一無二の商品のためマーケットは全国(世界)と考える。
・卸しを何軒も経由して最終的にお客が銀座の店舗で購入すると、工房で直接購入する価格の4倍!になるというのだから、それだったら工房までの旅費をこちらで負担してあげて、工房まで来て頂くことができれば、お客にとっても、工房にとっても嬉しい話だ。
・いっそ高級旅館とタイアップして、ツアーにしちゃうのも面白いかも
以上、お節介にも勝手に伝統工芸を経営的視点で見て、勝手に対策や企画も考えるというシリーズを3回にわたって書いた
ただ、一番重要なのは工房主(社長)の「変わる」「変わり続ける」という決意ではないだろうか
この「変わる」「変わり続ける」ということ決意がないところでは、我々も含め、なにも機能しないのだから・・・